【漫画書評】『Stand by me 描クえもん 佐藤秀峰作』を読んだ感想。漫画界の光と闇を描く問題作。面白い、リアル、セリフが熱い。

描クえもんを書評するPANDA
 
パンダ
描クえもん? なんだ、ドラえもんのパクリか。

今回の書評は漫画『Stand by me 描クえもん 佐藤秀峰作』だ。

今なら『キンドルアンリミテッド』で1巻と2巻を読むことができる。いつまで読めるかはわからないから、確認してから読んでほしい。

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『Stand by me 描クえもん』のあらすじ

パンダ
なんだこの汚いおっさんは?

主人公の満賀描男(まんが かくお)は、漫画家を目指す青年で、「未来から来た自分」と名乗る謎のおっさんに「漫画家目指すのやめろ」と言われ翻弄される。

それでも必死に漫画を描き続ける満賀描男、その先で待つものは……。

この「未来から来た自分」と名乗るおっさんをドラえもんに見立てた、オマージュ作品とも言える。

この漫画は、漫画家を目指す男のリアルな姿を描いたものだ。漫画家というよりは漫画界を描いた作品と言えるかもしれない。

印税、著作権、編集者や出版社との関係など、漫画家は漫画を描くだけではなくあらゆる問題が常につきまとう職業なのだ。

最初に言っておくが、この本は大人の男性にオススメの本だ。

漫画家を描いた漫画だからと言って子どもは読んではいけない。

描クえもんの見どころ、未来から来たおっさんの怒り

パンダ
おっさん、怒り狂ってるぞ。

くだらないことに命をかけることがくだらないか?

そうやって傷付かない場所から這いつくばってる人間を見下して… 一体何が見える…?

地べたからしか見えない景色があるんだぜ…?

よう傍観者… 当事者にしか見えない景色があるんだぜ…!?

これは居酒屋で漫画をバカにした男に対して、おっさんが怒りをぶちまけるシーンだ。

漫画のセリフでここまで揺さぶられたのははじめてかもしれない。

なぜ揺さぶられたのか。

自分が何かを目指しているからなのか? それもあるかもしれない。

しかしそれ以外に、実は自分こそ傍観者なのではないか、と思ってしまったからだ。

現実世界でもSNSの世界でも、実行者と傍観者に区分される。

自分はいったいどっちだろうか、もしかしたら傍観者なのかもしれない、そう思ったからこそこのセリフに揺さぶられたのだ。いや、心に突き刺さったのだ。

あなたはどうだろうか。このおっさんを前にして自分は傍観者ではないと言い放つことができるだろうか。

このおっさんのセリフは傍観者でいた者には言うことができないセリフだ。歯をくいしばって耐えてきたからこそ言えるセリフだ。

くだらないことに命をかける、それが真に命を燃やすということなのかもしれない。

描クえもんの見どころ、成功して苦悩する満賀描男

パンダ
成功したんならいいじゃんか。

やがて満賀描男は賞をとり、連載を獲得することになる。だが、満賀描男の苦悩はここから更に混迷を深めるのだ。

次の言葉は、満賀描男が母親で電話したときに言ったセリフだ。

ごめんなさい… 漫画家を目指してしまってごめんなさい…

この言葉の重みは本書を読まないとわからない。

成功したかのように見えて実は幸せにはなっていなかった、これは現実の世界でも大いにあることだ。

がむしゃらにただ成功したいためにがんばり、ゴールと言える地点まで到達したとき、ふっと自分の居場所を確認してみるとそこは自分が目指した場所とは違う場所だということに気づく。

人間はそうやって生きていくものだ。

そしてまた本当のゴールを目指して進む。

あえて言うなら、ゴールには到達しなくていいのかもしれない。常にゴールを目指し続けているほうが幸せなのかもしれない。

ゴールに到達してしまえばもう次に目指す場所はない。目指す場所がないと人間は生きていくことができないのだ。

だから、途中を楽しむしかない。人生は途中途中を楽しんだ者が真にしあわせをつかむことができるよう設計されているのかもしれない。

ドラえもんに未来に連れていってもらい、未来の自分を確認したところで、きっとそこには幸せはないのだ。

飛ばしてきた今と未来のあいだにしあわせは落ちているはずだ。

描クえもんの見どころ、作者佐藤秀峰のコメント

パンダ
海猿? いや、魚猿か。

本書のなかには、作者佐藤秀峰氏のコメントがいくつか載っている。その一部を引用しよう。

美大に進学して上京し、1年で休学し漫画家のアシスタントになりました。
面接ではこう言われました。
「2年経ったら人間扱いするから」

それから2年、僕は人間ではありませんでした。
不眠不休で絵を描き続け、月の労働時間は400時間を超えました。

おそらく今はここまでひどい扱いはされないと思うが、いや、それはどうかわからないが、これはブラック企業どころではない。

過労死ラインが月に80時間と言われているから、その5倍だ。しかもそれを2年は続けたということだから、下手したら身体や精神を壊していた可能性もある。

ただ、その狂気に身を委ねたことにより佐藤秀峰という漫画家が生まれたのなら、安易に否定することもできない。

本人がどう思っているかはわからない。あの時代があって良かった、と振り返ることができるならそれはそれでいいが、あの時代はないほうが良かったと思ったとしてあの時代がなかったら、今の佐藤秀峰は存在したのだろうか。

佐藤秀峰氏にも、未来から自分と名乗るおっさんが現れて今日まで導いてくれたのだろうか……。

描クえもん、おわりに

最後に、この漫画をひと言で現すセリフを引用して締めるとしよう。

印税が欲しいなら漫画家になれよ

パンダ
仙崎――!!!!!

今なら『キンドルアンリミテッド』で1巻と2巻を読むことができる。

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