
今回の書評は、西野亮廣著の「新世界」だ。行動できなくて背中を押してほしい人にオススメの書だ。感動できるポイントもあり、西野氏のやさしさが詰まった本と言えるだろう。
西野氏について知りたい人はこちらの書評も参考に。
新世界、キングコング相方梶原君、行方不明事件

毎日毎日、負け続けた。
その頃、梶原君は頭に10円ハゲをたくさん作っていた。
精神的に追い込まれ、本番が始まっているのにトイレから出てこない日もあったし、突然発狂することもあった。
次第に、まともに会話できなくなっちゃって、ついに全ての仕事を投げ捨て、失踪した。
行方不明になってから3日目。
関西のカラオケボックスで見つかった梶原君は、ひどく怯えていて、もう完全に壊れていた。
キングコングは若くして売れた。しかしスピード出世したはいいが、経験不足でネタ数も少なかった。だから、負け続けたことにより相方の梶原君は壊れてしまったらしい。
このエピソードは知らなかった。すぐに売れてしまい、苦労していないようなイメージがあるが、本当のところは外からではわからないものだ。
成功している人ほど、影で苦労していたり、相当なプレッシャーを感じて仕事をしていたりする。
そう考えると、普通の勤め人が受けるプレッシャーというのは、芸人が受けるプレッシャーから見れば大したことがないのかもしれない。
もちろん、仕事内容やどんな会社かにはよるが、売れなければ食っていけないという世界に身を置くことは頭に10円ハゲができるほど、精神的に追い込まれてしまうのだろう。
それならば勤め人のほうがどれだけ楽だろうと思うのだ。
新世界、コミュニティーの時代に生き残る会社の条件

オンラインサロンを利用して、個人がやりたい仕事だけを選べるようになってきたこの時代に、仕事内容をバッキバキに決めてしまう「会社」の立ち位置は難しい。
結論から言うと、社員に利用されない会社は廃れる。これは間違いないね。
今の時代、個人が自分で稼ごうと思ったら昔よりも稼ぎやすい時代になったのは間違いない。ブログやユーチューブ、またSNSを活用し、自分を売り込むことは容易にできる。いや、すでにできている。
これはこれから更に加速していくだろう。そのときに取り残されるのは、頭の固い経営者の会社だ。いまだに古い慣習を後生大事にして、昔からの悪慣習を守ろうとしている経営者たちはそのうち一掃されるだろう。
一昔前は、個人個人がそれぞれのお店の店主だった。肉屋があり魚屋があり米屋があり八百屋があった。時代はそこに回帰しようとしているのではないだろうか。
場所はインターネットに移るが、個人店主であることには変わらない。新たな時代の店主が誕生しているのだ。
その変化に適応できない会社は自然と淘汰されていくのだろう。
新世界、被災地に千羽鶴はいらない

どこの被災地も千羽鶴の苦しめられていた。被災地に「千羽鶴」は要らない。
しかし、そのことを言うと、また、あの声が聞こえてくる。
「お前達のことを想って鶴を折ったんだぞ!」
「お前達のことを想って送ったのに、選り好みしやがって!」
想像力が欠如している正義は、殺人犯よりタチが悪い。
西野氏は実際に阪神大震災で被災した経験を持ち、また、各地にボランティアとして被災地に駆けつけた経験も多数ある。
そのなかで被災地に救援物資として送られてくるもののなかに、千羽鶴があるがこれが被災地を苦しめているとのことだ。
少し想像すればわかると思うが、住む家を失い、その日の食事さえまともに食べられない状況の中、千羽鶴が届いて誰がうれしいだろうか。
純粋にその気持ちを有難がる被災者もいるだろう。しかし、実際問題、千羽鶴があっても飯が食えるわけではないのだ。
これがわからない人は、西野氏の言う通り、想像力が欠如しているとしか言いようがない。
引用にあるような批判を言う人は、普段から相手のよろこばないプレゼントをしているんだろう、と思ってしまう。
好きな女性がいたとして、プレゼントをあげる場合に必要なのは、相手の好みだけでなく相手と自分の距離感や商品選定やタイミングのセンスが問われる。
あげたんだからよろこべ、という発想は貧相でしかない。そのプレゼント要らないんですけど……。
新世界、おわりに
最後に、西野氏からのエールを紹介して締めるとしよう。
少しだけでもいいから、挑戦して、
少しだけでもいいから、失敗から学んで、
少しだけでもいいから、傷を負って、
少しだけでもいいから、涙を流して、
少しだけでもいいから、想いを背負って、
強くなってください。
