
今回の書評は『世界基準の上司 赤羽雄二著』だ。赤羽氏は他にも『ゼロ秒思考』などの著書で有名だ。
この本は仕事に悩む人にオススメの本だ。
・これから上司になる人
・上司のことで悩んでいる部下の人
部下を馬鹿にする上司は後で恥をかく

初めて部下を持つと 、部下のスキルの低さに目が行ってしまい 、どうしても馬鹿にしたくなることがある 。上司として自信がないと 、何の意味もないのに妙に張り合ったり 、こちらが優位だと示したいあまりに部下の欠点をあげつらったりする 。そういうふうに接していいことは何もない 。むしろ部下の気持ちから言うと 、 「そんなに馬鹿にしたいならすればいい 。後で恥をかくのはそっちだぞ 」となる 。一生懸命やろうという気持ちは当然なくなってしまう 。周囲も 、そういう狭量の上司を冷ややかな目で見ることになる 。
こういった上司は自分の立場を守ることしか考えていない場合が多い。それは自信がないからに他ならない。自信がないから部下の弱いところをつき、攻撃する。誰でも弱いところはある。それは部下だけでなく上司もだ。
上司は部下を攻撃しているようで、実は自分自身の弱いところを攻撃しているのだ。自分と似た弱点を持った部下を見ると人は攻撃したくなるのだ。その弱点を持つことの弱みや痛みを知っているから。
こういった上司の下では部下は育たない。我慢ができないからだ。人の成長には時間をかける必要がある。しかしその時間を待てない上司というのは部下を育てることができない。たまごをあたためるようにじっくりしかし確実に育てなければ、いつか部下の殻はひび割れてしまう。そこから生まれるのは上司への憎悪以外にない。
上司が部下に関心を持たないと不幸な結果になる

自分が部下への関心をあまり持っていないなら 、なぜそうなのか 、自分は本当は何をやりたいのか 、それを一人でやるべきなのか人とやれるのか 、そもそも上司というような立場になっていいのか 、よく考えてほしい 。家庭環境に恵まれなかったり 、トラウマがあったりして人間不信に陥っておられる上司の方もいらっしゃるだろう 。ただ 、その場合 、特に意識して部下に接しないと 、部下に対しても 、会社に対しても不幸な結果になる 。
やはり部下は上司から気にしてほしいものである。干渉されすぎは嫌だが、放置されすぎも嫌なのだ。つかず離れず、恋愛のようだが上司と部下も似たような性質がある。
上司にはうまく部下を巻き込んで仕事をするという能力が求められる。ただ言いたいことを言って無茶な要求や感情的な叱咤激励ばかりでは部下は疲弊するだけだ。
そうではなく、ビジネスパートナーとして上司と部下は関係性を保つべきだ。上下関係が強すぎると、部下から上司へ意見や提案があがることは少なくなる。ブラック企業やパワハラ上司であればあるほどボトムアップ型の会社とかほど遠い。
俺は知らないお前のせいだ

危急の際 、 「俺は知らない 。お前のせいだ 」とばかりにするっとよける上司を往々にして見かけるが 、これでは上司としての役割を全く果たしていないし 、築きかけた部下からの信頼は一気に失われる 。不当な攻撃に対しては 、部下より上司のほうが情報力 、政治力 、交渉力等が強い 。部下への攻撃はその部署への攻撃に他ならない 。そう考えれば 、よけるどころか 、 「私が上司ですが 、かわいい部下が何かしでかしましたか ? 」と助けに入るのが本来だ 。
何かトラブルがあったとき、そこで部下を守れるかどうかが尊敬できる上司になれるかどうかの分水嶺だと思う。
そこで部下を見捨てるような上司には誰もついていかない。仕方なくついていく場合もあるだろうが、心はもうすでに離れている。
逆にそこで部下を守ったりかばったりできる上司は、たとえそこで痛い目を見たとしてもその後必ず部下はその上司を助けるもの。
それは上司部下の関係ではなく人間と人間の関係。人間同士なら助けて当たり前。人を助けるのに打算などない。それがどうして上司と部下では打算や計算で動くようになるのか。不思議だ。
世界基準の上司、おわりに
最後に「おわりに」から著者が危惧していることを引用して締めるとしよう。
日本企業が抜本的に変わらなければ 、海外の最優秀な人材は入社しないし 、間違って入社してもあっという間に退社してしまう 。ただ退社するだけではなく 、 「みんな 、絶対に日本企業で働くなよ 。とんでもない上司がいるぞ 。社長も役員もこの問題を解決しようとはしていないぞ 」と他の優秀な仲間に触れ回ることになる 。 S N Sの普及が 、よい情報も悪い情報も瞬間的に伝えてしまう 。
