
今回の書評は『好きなことしか本気になれない 人生100年時代のサバイバル仕事術 南章行』だ。
南氏はココナラの社長である。ココナラは知識やスキルの個人間取引ができるオンラインマーケットである。
わかりやすく言うなら、メルカリが品物を売り買いするのに対し、ココナラは技術を売り買いするといった具合だ。
本書では、南氏のこれまでの経験談を主に構成されている。
超濃密な人生を送っていると感じられ、自分自身の人生がスッカスカだと思い知らされるだろう。
ただ、南氏も鬱になりかけるなどしたこともあったようで、簡単に真似できる働き方ではないということは付け加えておく。
また、南氏は企業再生にも関わったことがあり、本書では、買収に関わる裏話や氏の葛藤なども知ることができる。
Contents
「心が満たされる好きなこと」でしか稼げない

「誰かに認められる」という他者評価は絶対ではない。人の思惑に縛られるというのは、過去の経験に縛られるのと同じで、未来の選択肢を狭めることになる。
誰かに認められたいと誰もが思っているはずだ。だがその認められたことによって縛られてしまうというのは、皮肉である。
他者評価は生きていく上で必要不可欠なものだ。
誰にも認められずに幸せに生きていくのは不可能だろう。
世界に自分ひとりだけ存在するなら、他者評価は必要ないしあり得ないが、現代社会ではそれは無理だ。
そこで必要となるのは、心が満たされるかどうか、と著者は言っている。
他者評価を求めながらも、自分自身で心を満たすための考え方を身につけたほうが、幸せに生きられると思う。
どちらかだけではおそらく行き詰まる。
評価について、柔軟で束縛されない考え方が必要になる。
これだけ情報が溢れて、誰も全体像を把握できていないほど複雑になった世の中で、正しいものを探すなど、砂漠で一粒の砂を探すようなもので、まず不可能だ。
信じるべきは自分しかない。
キャリア選びでもパートナー選びでも出会った人を最高にする

心の中で「もっといい誰かがいる」と思いながら一緒にいるよりも、一緒にいる時間を積み上げて自分にとっての世界一の関係を目指すほうがよほど合理的で幸せな決定だ。
もっと他に自分に見合う人が現れる、と言い続けて、結果婚期を逃している人は少なくないだろう。
それは今を見ずに、先ばかり見ているからだ。
今がなければ未来はないのだ。それをわかっていない人が多すぎる。
それに「自分に合った人」とは、どのような定義なのか。
何を持って自分に合ったと言えるのか。
おそらく、自分が納得満足する相手、という意味であり、自分勝手で相手のことを考えていない考え方なのだと思う。
自分がブサイクであったとしても、イケメンと一緒になりたいのだろう。
自分がブサ男だとしても、美女と一緒になりたいのだろう。
ではその相手の立場になったとき、何を思うだろうか。
おそらく妥協をしようとは思わないだろう。
外見ではなく内面でも同じことだろう。
もっといい誰かがいる、などと思いながら、相手と付き合うのは悲しいことであり失礼なことで、しかももっといい誰かなどどこにいるかもわからず、もしかすると今一緒にいるパートナーこそがその誰かである可能性もなくはないのだ。
これは、キャリア選びにも同じことが言える。
これは自分の仕事じゃないと言って、転職することは自由だが、転職ばかり繰り返していても何も身につかない。
転職して成功した人はもちろんいるだろうが、転職して失敗した人のほうが圧倒的多数なのではないかと思う。
だから、まずは目の前の仕事を愛さなければならないのだろう。
深く愛することで見えてくるものがあり、それが自分の力となり、更にお互いが成長を遂げる。
結局世の中を見ていると、ひとつのことに没頭しそれを追求し続けている人こそがいちばん幸せなのではないか、と最近思うようになった。
あなたはパートナーを深く深く愛することができているだろうか……。
正解がない世の中で生存していくには?

正解がない、予測ができない人生100年時代、解けない問題を前に意思決定を下すのは、自分自身しかいないのだ。
世の中には正しいと言われるものがあり、セオリーというか暗黙の了解というか、目に見えない厳然たるルールのようなものが存在する。
だがそれらが本当に正しいことなのかどうかは誰にもわからない。
正しいと思われたものが、あとになって正しくなかったと解釈されることは日常茶飯事だ。
そんななかでも、人は正しい行動をとることを求められる。
ひとことで言えば、無理ゲーである。
蜘蛛の糸一本の上を歩くような揺蕩う世界で、正しいものを選ぶなど誰にもできないのだ。
それよりも、自分が正しいと思うことを頑なに続けて、いつしかそれが正しいことだと世界に認識させてしまうことが、正しいことの作り方なのだと思う。
世界を変えてきた人々は、そうやって世界を変えてきたのだ。
大事なのは、自分で意思決定をすることだ。
誰かに判断を委ねたり、世界の流れに流されたりしていてはダメなのだ。
自分で意思決定しなければ、自分自身の成長はない。
決定することから逃げていては、何も得ることはないのだ。
こういうとき、『進撃の巨人』のアルミンの言葉を思い出す。
「何も捨てることができない人には何も変えることはできないだろう」
現状よりも一歩二歩前に出ないと何も変えることができないだろう。
正しさとは、今よりも前に進んだところにあるものなのだ。
立ち止まって現状維持では、正しさを求める資格もないのかもしれない。
好きなことしか本気になれない、おわりに
最後に、働く人にとって、こう言えたらかっこいいという言葉を引用して締めるとしよう。
「そういうことだ。パパ、かっこいいだろ」
そういうこと、が何を指すかは本書を読んで確認してほしいが、勤め人ならば心を打たれる内容になっている。
勤め人必読の書と添えて書評を締めるとしよう。
