
今回の書評は「鬼速PDCA」だ。社会人であれば「PDCA」は知っているであろうが、仕事の一連の流れを示したものだ。「PLAN:計画」「DO:実行」「CHECK:検証」「ACTION:調整」となる。これらは解釈がいくつかあるが、ここでは本書に合わせている。
著者の冨田和成氏は元野村證券

著者は元野村證券の営業マンで、現在は株式会社ZUUの代表取締役社長兼CEOの冨田和成氏だ。
著者が自社のビジョンを語っているところを引用しておこう。
当社のビジョンは 「南極の氷が溶け落ちるほど熱い世界を創ること 」である 。つまり 、世界中の人達が夢や目標を持ち 、それに向かって 1 0 0 %でチャレンジできる世界を創ることだ 。また 、同時に 2 0 3 8年までに時価総額 1 0 0兆円を超える 、圧倒的な世界一の企業を目指している 。現在 、社内で回している P D C Aはすべてこのゴ ールから逆算したものである 。
鬼速PDCAがオススメな理由

いくら情報を集めて課題やギャップを正確に把握しようとしても 、完全な把握などまずできないと思ったほうがいい 。むしろ 、課題抽出に自信が持てないから P D C Aサイクルを回せないのであれば本末転倒だ 。仮にここで課題を見落としていても 、定期的に検証を行っていれば 、どこかの段階で 「もしかして他に課題があるのでは ? 」と気づくことができる 。むしろ 、課題を洗い出すために P D C Aを回すという意識が重要なのだ 。
本書は、仕事がスムーズに進まない、計画が達成できない、部下の教育がうまく行かない、そんな悩みを抱えている人にオススメの本だ。
「PDCA」と言えば、もはや誰もが知っていて手垢のついた言葉ではあるが、では実際にビジネスマンたちがPDCAを適切に回せているのかというとそうではないだろう。
「PDCA」は速く深く回すことが肝要だ。それについて詳しく知りたい人は本書を紐解こう。
鬼速的、リミッターを外せ

人は自分の経験や知識 (つまり記憶 )を基に 、 「これくらいならできそうだ 」 「これはさすがにできない 」と 、自分の可能性に上限を設けようとする 。しかし 、有名な 「ノミの実験 」 (本来 2 mジャンプできるノミが 、数日間 、高さ 5 0 c mのカバ ーをかけられるとカバ ーを外したあとも 5 0 c m以上飛べなくなるという実験結果 )のように 、限界とは本人の思い込みにすぎないことが多い 。
ノミが思い込みにより限界を決めてしまうのと同じで、人間も自分で限界を決めてしまう生き物だ。そうなってしまったときはリミッターを外せ、と著者は言っている。
「できない」というのはそれまでの経験上できないと思っているだけであり、実際はできてしまうことが多いもの。もしくはできないと思っているのではなく、やりたくないからできないと言っているパターンもあるような気はするが。
著者の経験から行くと、とてつもないゴールを設定してそこから逆算してPDCAを鬼速で回していくと、自分の限界を超えることができるとのこと。これが常人にできるかどうかはわからない。だがそれがすでに自分で限界を作ってしまっているということなのだろう。まずは、ゴールを設定したらひたすらPDCAを回してみることが大事なのだろう。
鬼速PDCA、おわりに
本書では著者が使用しているツールを紹介している。ダウンロード用のURLが本書にあるので、気になる人はチェックしてほしい。
・鬼速進捗管理シート
・なるほどシート
・ルーチンチェックシート
・10分間PDCA
最後に、「おわりに」から著者の言葉を引用して締めるとしよう。
鬼速 P D C Aは究極の前向き思考だ 。過ぎ去ったことは教訓として学んだらさっさと捨てる 。あるステ ージまで到達できたら 、さっさと新しい P D C Aを回す 。現状で満足するという概念がそもそもない 。走り続ける必要があるので鬼速 P D C Aは大変だ 。人より速く前に進んでいるのだから楽なわけがあるまい 。でも 、これだけは言える 。 「前進を続ける人生のほうが絶対に楽しい 」と 。

↓図解バージョンもあるので要チェック。