
今回の書評は、『苦しかったときの話をしようか ビジネスマンの父が我が子のために書きためた「働くことの本質」森岡毅』だ。
森岡氏は、窮地に陥っていたUSJをV字回復させたことで有名だ。知っている人も多いだろう。
本書はその森岡氏が自分の子どもに向けて書いたものが、書籍となった形だ。その経緯は本書で確認してほしい。
まず、「はじめに」から一文引用しよう。
「この世界は残酷だ。しかし、それでも君は確かに、自分で選ぶことができる!」
やりたいことがわからなくて悩む君へ

自分の中に基準となる「軸」がなければ、やりたいことが生まれるはずも、選べるはずもない。
世間の多くの人が、そのうちやりたいことが見つかるだろう、と思って生きている。
本書にも書かれているが、大学に入り社会人になることが近づいてくれば進むべき道が見えてくるはず、と思っているのだ。
それで本当にやりたいことが見つかった人は少ないのではないだろうか。
多くの新社会人は、自分が一体何をしたいのかわからず、初めて入った会社でなんとなく働き続ける。
それが悪いわけではない。ひとつの会社で長く勤めあげることも立派だと思う。
ただ問題は、引用にもあるように、「軸」なのだ。
自分が何のために働いているかを自分で認識できているか否かという点がとても重要なのだ。
で、ここでひとつ。
「経験がないからやりたいことがわからない」という言い訳をした人。
これについても森岡氏は語っている。
それは、わからないことをわからないままにしたからわからない、ということだ。
わからないことを放置した結果、がこれなのだ。
ここでは、うしろめたさの闇、と表現している。
わからないことがあってもそれを放置してきた自分に対するうしろめたさ、というものが誰もが持っているものだ。
そのうしろめたさを感じないよう、自分から一歩二歩、踏み出すことがわからないことをわかるようになる唯一の道なのだ。
君の宝物はなんだろう?

そもそも二十数年間も生きてきただけで、ここまでの君の人生は大成功だと気づくべきだ。
日本人が、22歳まで生存する確率は99%だ。残念ながら100人に一人はすでに亡くなっている。
ここではいったん「軸」の話から離れて「宝物」の話に移る。
あなたには「宝物」と呼べるものがあるだろうか。
ここではその「宝物」を磨く重要性が書かれている。
現代は競争にさらされた結果、「宝物」が見えなくなっている人が多いとのこと。
おそらく人間は何か大事にするものがなければ、目を輝かせて生きていくことは難しいのだと思う。
何もないとどこからうしろ暗いというか、何か覇気というものがその人から出てこないように思う。
逆に自分が大事にしたいというものが明確になっていると、人は前向きに生きられるものなのではないだろうか。
でも、「宝物」は誰にもあると森岡氏は言っている。
引用にもあるように二十数年生きるということ自体が特別なことなのだ。
ここまで生きたなら必ず「宝物」があるはずなのだ。
年齢は関係ないが、自分が今まで生きてきた上で、宝物と呼べるものが何だったのか、じっくり自分の心を探ってみると良いだろう。
会社と結婚するな、職能と結婚せよ

スキル(職能)こそが、相対的に最も維持可能な個人財産。
会社と結婚してはいけない、この種の言葉は最近よく聞かれるようになった。
会社もいつまであるかわからないし、手に職を持っているほうが有利だということだ。
どこどこに勤めている、というより、私は何ができます、というほうが大事なのだ。
今後、副業がますます活発になってくると、手に職を持った人たちが多く出てくるだろう。
簡単なところで言えば、手作りのものをネットで販売したり、自作の小説をnoteで販売するなど、である。
会社に縛られず、副業で稼ぎ、自由を手にする、というのが今後の新しいワークスタイルになるだろう。
会社はいつなくなるかわからない。
そのときのために準備をしておく必要がある。
何も準備せず、急に会社から放り出されたらどうにもならない。
勤め人こそ、今から武装しておく必要があるのだ。
会社と結婚してうまくいったのは、団塊の世代までだ。
それより若い世代はいかにスキルを身につけ、磨くかを意識しなければならない。
いつまでも過去の日本の盛衰を気にしている場合ではない。
これからの時代でいかに生き残るかを考えていこう。
苦しかったときの話をしようか、おわりに
最後に、父である森岡氏から子どもたちに向けたメッセージを引用して締めるとしよう。
本書は、子どもを持つ親、そして、その子どもたちが読むべき本として強くオススメしたい。
「生まれてきてくれてありがとう!」
父より

苦しかったときの話をしようか ビジネスマンの父が我が子のために書きためた「働くことの本質」