
今回の書評は、漫画『彼方のアストラ 篠原健太著』だ。
これ『少年ジャンプ+』で連載され、全5巻完結の漫画である。
5巻で完結と聞くと短いと思うかもしれないが、謎を用意し、伏線をいくつも張り巡らせ、冒険的要素も盛りだくさんで、重厚な5巻であると言っていいだろう。
5巻が少ないとか多いとかではなく、この物語は5巻でちょうどいいのだ。
重要なネタバレはしないようレビューしているつもりだ。
彼方のアストラ、あらすじ

西暦2063年、宇宙への往来が当たり前になった時代で、主人公カナタを中心としたケアード高校の生徒たち9人は、惑星キャンプに旅立つことになる。
しかし、あることが発覚し、9人のなかに旅を邪魔する刺客がいる可能性が浮上。
刺客は本当にいるのかいないのか、この旅の目的とは何なのか、謎を抱えたままカナタたちは星々を旅する。
「通信機は、連絡できなくするための誰かが意図的に壊したんだ」
「その犯人はこのメンバーの中にいる!」
こうやって前半で謎の提示をしておくことで、常に怪しい人物を考えながら読むため、いつの間にか引き込まれている。
刺客のこと以外にも次々とトラブルが起こるため飽きる要素がない。
細かくプロットを組み立て、緻密に計算されたストーリーであると言えるだろう。
彼方のアストラは冒険漫画でありミステリーでもある
この漫画はときおりギャグを交えつつ、主に冒険物として展開していく。
全体として、主人公カナタの真っすぐで何事も諦めない姿に心を打たれるだろう。
「くっそ嫌いなんだよ。絶望とかいう言葉」
だが、4巻の途中からある事実が判明すると、途端にミステリー色が色濃くなっていく。
これについては一切書かない。どういったことが判明するのかは推理しながら読み進めてほしい。
彼方のアストラは泣ける
ギャグがあり冒険があり謎がある。そして涙もある。
最後に、「ある人」が「ある人」をもらうために「ある人」に言ったセリフを紹介して締めるとしよう。
この3人の関係を知ったあとこのセリフを読めば、涙が出てくることは間違いない。
「お嬢さんをボクに下さい」
