
今回の書評は「拝金」である。本書はホリエモンがはじめて小説の執筆に挑戦した作品となる。
まずはこの小説へのホリエモンの思いを「あとがき」の言葉から引用しよう。
この本を読めば 、きっと誰もが突き抜けられる 。そんな思いを込めながら 、この小説をみなさんに発信します 。
拝金のあらすじ

主人公は、藤田優作という年収200万円のフリーターで、その藤田がなぞのオッサン・堀井健史と出会うことで人生が変わっていくというストーリー。
起業し、金持ちへと変貌していくが、そこにはある仕掛けが?
ホリエモンの人生とダブったストーリーとなっているところもおもしろい。
拝金、本当に欲深いのは

狂おしいほど求めてしまうものが欲だとすれば 、俺はそれを一度 、捨てた 。そんなものがあるから苦しむんだ 、と 。そして思い知らされる 。そんなことを言うやつほど 、本当は欲深いのだ 、と 。
欲がなければ苦しまずに楽になれるのだろうか。何も欲しがることなく最低限の生活をすることで人間は平穏を手にすることができるのだろうか。
それには疑問が湧く。人間は欲があるからこそ進化してきたわけで、欲がなければ今も石器時代のような生活をしていたかもしれない。進化しないということだ。
あえて言うならそのほうが人間は幸せだったかもしれない。動物たちを見ていればわかるが、特に何かに思い悩むことはなく、人生に絶望して自ら命を絶つことなどない。それを今更言ったところでもう進化は止められないが。
今の人間に大事なのは、欲を持っていることは当たり前と受け取り、その欲をどう表現していくかということだろう。そこにその人の人間性が現れるのだ。欲を公言するのも欲をひた隠しにするのも、その結果がどうなろうとその人が受け止める以外にないのだ。
拝金、鳩の話

野生に適応できないから 、レ ース鳩は人に大切にされてきた 。逆に言えば 、外の世界からはもう受け入れられないのだ 。それがレ ース鳩の最大の 「才能 」とすれば 、それを奪うのは簡単なことだった 。ちょっと優しくしてエサをやればいいのだから 。気まぐれな優しさによって 、優作鳩はこれから外の世界で生きる決意をした 。そして 、きっと 、生き抜けないだろう 。まるで俺だな … … 。
優作は鳩に自分を重ねる。ここを読んだあなたも自分と重ねたかもしれない。勤め人で言えば会社に完全に依存して生きることと似ているかもしれない。勤め人であっても仕事以外に何か武器を持たなければ生きていけない時代になっている。いや、生きてことはできるが、自分で人生をコントロールして生きることはできない時代になっている。
何か武器がほしい。そうしなければレース鳩のように外の世界では生きられないだろう。
拝金的、金の価値

金の価値は交換したい個人の 「欲望 」でいくらでも変動する 。ある物に対して 、どんなことをしてでも欲しいと思えば 、金の単位的な価値は低くなり 、逆に大して欲しくないならその価値は高くなる 。愛はタダで買える 、でも 、いくら払っても買えないのだ 。いわゆる 、高いとか安いとかは 、世の中にはびこる適正価格を意識したもので 、それはあくまで 、このくらいの値段で交換したいという 、欲望の平均的な数値にすぎない 。
金で何でも買える、と言い切ってしまうほうが最近気持ちがいいことに気づいた。妙に、金儲けのことを批判している人を見ると、本当は金が欲しくて欲しくてたまらないのだろう、としか見えなくなってきた。
金はなければ欲しい、金は手に入れたらそんなに欲しくなかったことに気づく。本当に欲しいものは何だろう? この問いを自分にし続けないと一生答えを得ることはできない。
欲望の平均的な数値、を見極めて行動しないと、金に踊らされることになるかもしれない。
拝金、おわりに
最後に、本書の中でホリエモンが最も言いたかったであろう言葉を抜粋してみた。これで締めるとしよう。
「知ろうとしないやつにわざわざ教えるほど 、世の中は親切じゃないだけさ 」
「腐ったマスコミを買い叩く ! 」

この本は今ならキンドルアンリミテッドで読める。是非チェックしてほしい。