
今回の書評は『実行力 結果を出す「仕組み」の作りかた 橋下徹』だ。
多くの人が知っているだろうが、大阪府知事、大阪市長を務めた橋下氏の著書である。
氏は周囲の人たちといつも戦っていたように見えるが、それには意味があり、また、いつも氏から戦いを仕掛けていたわけではないことが、本書を読めばわかる。
氏がこだわってきたのは一貫して「実行力」である。
では、中身を見ていこう。
Contents
橋下流、部下との人間関係なんか気にするな

人間関係を気にしすぎると、部下に「いい上司」と思われたいという気持ちが強くなってしまいます。
「部下との人間関係づくりは難しいもの」と思って接するほうが、気持ちがラクになる。
先に補足しておくと、何も橋下氏は人間関係はまったく気にする必要がないと言っているわけではない。
政治の世界では「人間関係こそが全て」とも語っており、政治に人脈づくりは欠かせないのだ。
そういった点は橋下氏は苦手だが、松井一郎氏は人間関係を築くことに長けており、松井氏がいたからこそ維新の会を運営していくことができたとのこと。
普通の企業であっても、人間関係は大事だろう。
ただ、部下のご機嫌とりのような上司になる必要はないということ。
あくまで上司部下の関係であって、それが一生続くわけではないため、根底には仕事を置き、ときにはドライに接することも重要なのだ。
しかし、ここでひとつ言っておきたいのは、極端では困るということ。
人間関係なんか気にするな、という言葉を聞くと、極端に部下に対してキツくあたるような上司がいるだろう。
それは言葉の意味をはき違え、自分の良いように解釈し、自分の感情を発散するためだけの行為であるから、周囲の人は相手にしないほうがいいだろう。
根本には人間関係は大事という認識を持ちつつ、いかに仕事を完遂していくか、がその人の能力ということになるだろう。
橋下流、リーダーは「小さな問題点」に目をつぶり「大きな問題点」を見つける

リーダーが現場の実務の細かなことに口出しをすると、たいがい失敗します。
これは上司である立場の人は熟読するべき項目だろう。
リーダーと呼ばれる人の役目は、結果を出すことであり、部下のやる気を削ぐことではない。
多くの上司が、小さな問題点に口出しをし、部下のやる気を削いでしまっていることを認識したほうが良い。
また、そういった口出しをすると、わかっていないクセに、と部下から思われて、上司の株を下げることになる。
実際に部下がやっている仕事を上司がやったとしたら、うまくいかないことのほうが多いだろう。
部下というのは非常に細かな仕事を日々積み重ねているのだ。
上司のように大きな案件だけを進めていればいいのではない。
煩雑な手続きやあらゆる書類の作成やチェックなど、細かな業務に追われているのだ。
それには口出ししないほうが賢明だ。
それよりも大きな問題点に率先して取り組み、部下の環境改善をしてあげたほうがよっぽど上司の評価は上がるだろう。
結局、小さな点しか見ないリーダーはその程度の器で、大きな点を見る能力はないと部下に蔑まれて見られるだけなのだ。
橋下流、絶対的に正しい答えなんて見つからないもの

失敗しても命まで取られることはないのですから、「絶対に失敗しちゃいけない」などと考えないほうがいい。
これはよく言われることだが、実際に行動するにはそれなりの勇気が必要である。
命まで取られることはないとわかっていても、何かミスをすれば叱責され嫌な気持ちになることは間違いない。
それを恐れて人は行動できないでいるのだ。
命まで取られることを恐れているわけではない。
ただ、この世界では行動しなければ何も得ることはない。
大学に入ったり、就職したり、恋人をつくったり、結婚したり、何をするにも行動しなければ得ることはできない。
失敗を恐れていてはいつまでも何を得ることはない。
待ちの姿勢でいて幸せになることはないのだ。
命まで取られることはないにしても、何か自分の尻に火をつけるような考え方を持ち、生きていくと今後得るものは多くなるはずだ。
実行力、おわりに
最後に、橋下氏の願いを引用して締めるとしよう。
新しい日本の統治機構を築き上げてくれる次世代の政治リーダーが誕生してくれることを願ってやみません。
