【書評】『生まれてきたことが苦しいあなたに 最強のペシミスト・シオランの思想 大谷崇』を読んだ感想。ネガティブで心が弱い人にオススメの本。

『生まれてきたことが苦しいあなたに 最強のペシミスト・シオランの思想 大谷崇』を書評するPANDA
パンダ
新年一発目の書評にふさわしいタイトル笑

今回の書評は『生まれてきたことが苦しいあなたに 最強のペシミスト・シオランの思想 大谷崇』だ。

シオランをご存知ない方のために、本書の冒頭を引用しておこう。

シオランは、1911年に今のルーマニアに生まれ、第二次大戦後フランスで活躍した思想家・哲学者・作家・エッセイストである。
「ペシミストたちの王」とも言われるように暗い思想で知られる。

ペシミストとは、「悲観論者」「厭世家(えんせいか)」などを指し、厭世とは簡単にいうと、世の中や人生を嫌なもの価値のないものと思うこと、という意味だ。

要は、この本は暗い本ということである。

”本書はこんな人にオススメ”
・ネガティブな人
・心が弱い人
・独りが好きな人
・優しすぎる人

実はこれらには多くの人が当てはまる。ゆえにあなたにも是非読んで欲しい本ということだ。

本書『生まれてきたことが苦しいあなたに 最強のペシミスト・シオランの思想 大谷崇』がオススメの理由

パンダ
徐々に文章に引き込まれてしまいますよ。

本書はタイトルからすると取っ付きにくいと思うことだろう。

本屋で手にしてレジに持って行くのも憚れるようなタイトルでもある。

だが読んでみると次のように思うだろう。

自分の中にある暗い考えを言語化してくれている、と。

例えば次のような文章がある。

独りでいることが、こよなく楽しいので、ちょっとした会合の約束も、私には磔刑にひとしい。

独りが好きな人には共感できる言葉ではないだろうか。

本書ではこういったシオランの暗い言葉たちを引用しつつ、著者の大谷氏の解説をまじえて進んでいく。

ネガティブな人が読めば、自分の心のうちを説明してもらって恥部を見られるような恥ずかしさとも何とも言えない歓喜の感情が沸き上がるだろう。

怠惰は美徳?

パンダ
シオランはパラサイトの生活を送りたかったと語っていますね。

「ああ、また一日が始まった、またこの日に耐え、この日を終えなければならないのか」と考えねばならない苦しみにまさる苦しみはないでしょう。

怠惰な人であればこの言葉は「わかるわかる」とうなずくところだろう。

私も思わず同意してしまった。

人間は本来怠惰な生き物なのだろう。

だが社会という空間に出た瞬間、何者かになることを要求される。

それは誰からの命令でもないはずなのに、何かに急かされるように何者かになろうとする。

それは本当に正しいことなのか?

この章を読むとそんなことを考えてしまう。

シオランは怠惰は美徳だとも語っている。

怠惰であるからこそ罪も犯さないという言い方もしている。

罪を犯す者はある意味それだけのエネルギーがあるということで、本当に怠惰な人間はそれすらも億劫で行動しようとしないというのだ。

それはあたっているかもしれない。

怠惰であることが悪いことである、とは一概には言えないのかもしれない。

ただ、シオランが本当に怠惰であったら「ペシミストたちの王」として世に名を残すことはなかったのではないだろうか。

それとも真に怠惰であったから名を残すことになったのだろうか。

ひとつ言えることは何事も突き詰めれば、何かを為すことにつながるということだ。

錯乱した世界そのものに入っていく

パンダ
それでも人は生きてゆかねば……。

怠惰であっても普通に生きるには、この錯乱した世界を切り抜ける努力が必要である。

人ともうまくやっていく必要があるし、自分の役割を果たしていく必要がある。

だが他人との関係のなかで避けられないのが、意見の相違や憎しみという感情との向き合い方だ。

それに疲れてしまったシオランが出した結論は次のとおりである。

結局はいつも自分が最新の敵に似てしまうのを知って以来、私はもう誰にも攻撃をかけないことにした。

敵をつくらないようにしても敵はできてしまうもので、一度敵ができると敵には弱みを見せまいとする。

しかしそれは敵も同じである。

そんなことをしているあいだに自分と敵が似てきてしまうというのだ。

敵対することを嫌うシオランだが、「憎しみは力」とも語っており、愛よりも憎しみからの力のほうが長持ちするというのだ。

世の中で成功した人は憎悪の力をうまく活用したとのこと。

要は憎悪も使い方次第なのだろう。

ただ憎悪を周囲にまき散らすだけでは、誰でもわかるとおり成功するわけもない。

憎悪を原動力として、自分のなかで昇華させ、それを行動に変えるという行為をしなければならない。

憎悪は言い換えれば、嫉妬だったり怨恨だったり悲哀だったりするのだろう。

それらの感情をいかに使うか、そこにその人の人間性というものが見えるのだと思う。

おわりに

最後に、本書の結論と言って良いかわからないが、ペシミストをひと言で表す言葉を引用して締めるとしよう。

「自分は、地球の表面を何十億と匍いまわっている生きものの一匹だ。それ以上の何者でもない」

パンダ
ペシミストの考えも、その解釈によって現代を生き抜くヒントになるかもしれません。