
今回の書評は『言葉ダイエット メール、企画書、就職活動が変わる最強の文章術 電通コピーライター橋口幸生』だ。
本書はビジネス全般に役立つ文章術の本である。
どんな仕事でも文章を書くということはついてまわる。
文章は伝わらなければ意味がなく、そのためには文章をそぎ落とすダイエットが欠かせない。
「書くこと」に悩んでいる人は是非目を通してほしい本である。
『言葉ダイエット』をオススメする理由

ビジネス文書が長くなる理由
1、読んでもらえる前提でいるから
2、あなたが真面目で能力が高いから
ビジネス文書が長くなる理由として著者は2つあげている。
ひとつは「読んでもらえる前提でいるから」というものだ。
長いメールを送ったとしても、これは仕事なのだから読んでくれるだろう、と思ってはいないだろうか。
そう甘くはない。
実際にあなたが長文メールや長文のビジネス文書を受け取ったときすべて読んでいるだろうか。
おそらく読んでいないだろう。
それは他人も同じである。
だから読んでもらえる前提で書くのではなく、読んでもらえないかもしれないから読んでもらえるにはどうしたらよいか、と考えることが必要なのだ。
また、「真面目で能力が高いから」という理由もあげられている。
これはすべての人にあてはまることではないが、よくあるのが妙に敬語が詰め込まれているビジネス文書だ。
失礼がないようにしたい、できる限り丁寧にしたい、などの気持ちからあれこれ詰め込み、結果長くなってしまうということがあるようだ。
この2点にひっかかった人は本書が役に立つだろう。
例文を多く使用し、誰でもわかるように解説してくれている。
言葉ダイエット、1文は40~60文字以内

・1文あたりの文字数を少なくする
・目安は40~60文字以内
あなたのまわりにいないだろうか。やたらと一文が長い人。
一文が長い人は頭の中が整理できていないように思う。
小説ではあえて一文を長くすることもあるが、ことビジネスに関しては長いより簡潔な文章のほうが良い。
長い過ぎると何を言いたいのかがわからないからだ。
よくあるのが、「~ですが、~ですが、~しており、~しており、~なのです」という感じの長いだけでなく、言葉が重複しているパターンだ。
これはもうただ文章能力が低いとしか言えない。
他には、最初と最後で言っていることが変わっているパターンもある。
「Aはこれこれこうですが、~よってBはこうなります」みたいな文だ。
入り口と出口を間違えてしまった文章は相手には伝わらないし、疑問を持たせるだけだ。
こうなってしまうなら、短くていいから一つひとつのことを伝えたほうがいい。
小学生の作文のように、「~へ行きました」「~がきれいでした」「~とても楽しかったです」というほうが伝わる文章としては点数は高い。
変に語彙が増えるとそれを使いたくなるため、文が長くなり、意味もわからなくなってしまう。
ここではただ文字数について言及しているだけだが、大切なのは推敲だろう。
プロもすべての文が一発で40~60文字に収まるわけではない。
書いたあとに推敲し、削っているのだ。
いきなり完璧な文章など書ける人はいないのだから、まずはとにかく書いてみて、あとから推敲すればいいくらいの気持ちのほうが良い文章が書けるだろう。
言葉ダイエット、ムダな敬語禁止

ムダな敬語禁止
・丁寧すぎる文章はかえって印象が悪くなる
本書にも書かれているが、「~させていただいた」という表現をよく見るのではないか。
いったい何回いただくつもりなのか、というくらい頻繁に文章に登場する。
相手に失礼のないようにと考えた結果そうなるのだろう。
日本語は敬語が重要であるからそのぶん多少長くなるのは仕方がない面もあるが、それにしてもこれは行き過ぎではないか、と思う文は結構多い。
またこれは文化や習慣だから如何ともしがたいが、時候の挨拶のようなものも本来はなくても良いものだと個人的には思う。
時下益々ご清栄の……、こう書いてあってもまともに読んでいる人はいないだろう。
マナーとして知っておくのは必要だが、意味なく使う必要もないと思う。
おわりに
本書には誰でも簡単に実践できる文章テクニックが紹介されている。
身につければ今よりも成長することは間違いない。
特別対談として、「読みたいことを、書けばいい」の著者田中泰延氏との対談も収録されている。
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