
「何事も数字で考えろ」
「考える前に数えろ、議論する前に数えろ」
「数字で語れない者は去れ!」
「この数字はおかしい。この%の分母と分子は何だ?」
こんなことを上司に言われ続けたら誰でも嫌になるだろう。
このセリフをいったのは、孫正義である。
数値化仕事術とは
数値化と聞くと固いイメージがあると思う。だがここで紹介する数値化はまったく別の要素を持っている。
従来の数値化は次のようになる。
・上から押しつけられる
・ノルマ、プレッシャー
・長時間労働→分析するだけで終わり
このようにデメリットばかりで良いところがない。しかし、本書の数値化の概念は次のようになる。
・自分で取りにいく
・問題解決ツール
・時短、生産性向上→次の打ち手につながる
これが著者が孫正義のもとで身につけた「数値化仕事術」の概要である。
では、詳細をみていこう。
声が大きい人の的外れな提案や意見を通さない!

多くの企業は「部下がいった正しいこと」よりも、「上司がいった正しいかどうかわからないもの」に左右されて動いている。部下もそれに従わざるを得ないため、しぶしぶいわれたを仕事する。
これで生産性が上がるわけがない。
これはイチ企業の問題ではなく、日本全体の抱える問題であると認識したい。
それとは対象的に、ソフトバンクでは「数字は誰にとっても絶対的な事実」として、たとえ若手社員の意見であろうと数字が正しければ孫社長はそれを受け入れるらしい。若手社員が正しい数字を持ってくるということはほとんどないと思われるが。
孫社長は、人の意見やアイデアを「良い悪い」「好き嫌い」などの主観では判断しません。
「これなら結果が出る」と数字で客観的に示せるものならOK、示せないなら却下するまでです。
(中略)
一方、日本企業の多くは、上の人が言えば、「白いものも黒くなる」という文化です。
だから「上の人がそう言っているから」というだけで、思考停止してしまうのです。
これを読んでまさに思考停止しているのはウチの会社だ、と思った人は多いのではないだろうか。おそらくほとんどの会社がそうなのではないか、と思うほど日本の会社は頭でっかちになっている気がする。
しっかり数字で事業を語れる人が現れるか、誰かがそうならなければあなたの会社がなくなる日はそう遅くないかもしれない。
PLAN(分析)ばかりでDO(実行)していない

ビジネス「実行ありき」と著者は繰り返しいっている。ただ世の中の会社には、机上の空論をこねくりまわしてばかりでいつまでたっても実行に移さない会社が思いのほか多い。
ソフトバンクではとにかく「DO」することで数値化の精度を高めているとのこと。そしてソフトバンクの強みは「DO」のあとにこそ発揮されるとのこと。
これができたらどの会社でも強くなるはずだが、おそらくそうはならない。みんな臆病だから。誰かがやってそれがうまくいけばそれに乗っかりはするが、自分から先頭に立って失敗はしたくないという思いが先に立つ。
「DO」するからこそ、その後に精度の高い「PLAN」ができる。
いつまでも「P」で留まらず、できるだけ速く「D」へ移ること。
これが数値化を成果につなげるための鉄則。
失敗を恐れない会社は強い。いや、恐れているからこそ誰よりも速く動き、速く失敗し、速く改善する、のかもしれない。一番の失敗は恐れをなして何を策を弄しないことなのだろう。
孫社長は「有利なサイコロ」を振っている

この本の中で、この章はビジネスを成功させる上において重要な何かを訴えているように思えた。
それは以下の引用を見て感じてほしい。
有利なサイコロを振るには、自分が成長ドメインにいることが必須。
孫社長は常に「先を見通すための情報」を手に入れることで、サイコロを自分にとって有利な形に変えてきました。
ソフトバンクは外から見ると無謀なチャレンジをしているように思われがちですが、実はものすごく勝率の高いゲームしかしていないのです。
見た目は派手なソフトバンクの経営手法であるが、実は繊細な数値上の計算があるからこそ、大胆に実行できるのだろう。
やはり会社は、トップは病的なまでに数字に強くなければ、その手腕を振るうことはできないし、人はついてこないのだと、孫正義が証明しているのではないか。
おわりに
これで孫正義が考えていることの一片を知ることができたと思う。
本書には、この他にも「超おすすめツール」としてビジネスに役立つツールの紹介もしているので、気になる人は読んでみてほしい。
では最後に、おわりにから一文引用しておわりにしよう。
「誰のアイデアかはどうでもいい。一番儲かることをやればいいんだ!」
