【書評】『野良犬の値段 百田尚樹』を読んだ感想。これはミステリーではなくマスコミ界の内状を暴く告発書である。現代の報道の在り方に問いかける問題作。

野良犬の値段の書評
パンダ
ある意味、ミステリーではなく告発書ですね。

今夏の書評は『野良犬の値段 百田尚樹』だ。

出す本出す本、ヒットを記録する百田氏だが、今回も現代に投げかける問題作となった。

『野良犬の値段』のあらすじ

あらすじを簡単に紹介すると、ホームレスを対象とした誘拐事件が発生し、犯人たちはその身代金をマスコミ各社相手に要求する。なぜホームレスなのか、そしてなぜマスコミ相手に身代金を要求したのか、事件が進むにつれて徐々にその理由が明らかになっていく。犯人たちの真の目的が明らかになったとき、すべてがつながる。

『野良犬の値段 百田尚樹』がオススメの理由

主に犯人側の視点とマスコミ側の視点で描かれているが、注目すべきは身代金を要求されてからのマスコミ各社の対応だろう。
新聞社やテレビ局がターゲットとなるのだが、どのマスコミも右往左往する姿が描かれている。実際にこのような事件が起きたら同じように右往左往するだろうことが、簡単に予想できる。

これはテレビ界などに精通している百田尚樹だからこそ書ける小説と言っていいだろう。
これはミステリーのジャンルに区分けされているが、そうではなく、マスコミの内状を暴露する告発書なのだ。
百田氏はミステリーを書きたかったわけではなく、マスコミのことをどのように暴露してやろうかと考えて、このような作風にしたのだと思う。

ストレートにマスコミを糾弾したところで効果はないだろう。それよりも変化球で攻め、マスコミの反論をされない形での暴露を狙ったのだと推測する。

テレビ局の36時間テレビについて書かれた箇所を細かいところは省略して引用しよう。あくまで24時間テレビではなく、36時間だ。

36時間テレビがその日に手にするCM料金は20億円、製作費は5億円、タレントのギャラを差し引いてもテレビ局の儲けは20億円。
メイン司会者の男性タレントのギャラは4,000万円。

これが現実の世界と合致するかはわからないが、それほどかけ離れてはいないだろうと思う。
次からみるときは、ああ、あの司会者は4,000万円もらってるのか、と思って見ることだろう。

実際に欧米でのチャリティ番組は、タレントはノーギャラ、テレビ局も利益なしでやることが通例とも書かれている。
百田氏がいちばん言いたかったのはここではないかと、読んでいて思った。今後のチャリティという名のあり方が変わればいいと思う。

正直、本作はミステリーとしては物足りないものであったが、読み物としてはたいへん刺激になるものだった。
犯人側の狡猾さ、マスコミ側の醜悪さ、世間の人間の稚拙さ、このあたりを楽しむと良いだろう。

犯人像に焦点をあてて映像化をすれば、感動する作品に仕上がるとは思うが、映像化に名乗りをあげるテレビ局が出てくるとは思えない。特に日◯テレビは手を上げないだろう。WOWOWやNetflixあたりが手を上げるかもしれない。
今後の動きも要注目の作品である。

パンダ
これは虚実か現実か。