【書評】淡い恋愛で号泣したい人へ。『君の膵臓をたべたい 住野よる著』を読んだ感想。(オススメ小説)

君の膵臓をたべたいを書評するPANDA
 
パンダ
オイラは膵臓なんかたべたくないぞ。

今回の書評は、小説「君の膵臓をたべたい」である。

高校生の主人公の「僕」は、クラスメイトである「山内桜良」が膵臓の病気で余命1年未満ということを知っているのだが、そんな中、ふたりのウィットに富んだ会話がとても印象的な作品だ。
しかし、彼女は余命を待たずに死を迎えることになるのだが……。

まずはこの本を読んだ私の、全体的な感想を述べよう。

高校生の淡い恋愛小説、なのだが、初恋の匂いや距離感が絶妙な感触で伝わってくる作品である。そこに彼女がいるかのように、体温すら伝わってくるような錯覚を覚えた。高校生が読めば誰か同級生を思い浮かべ、恋愛経験のある大人が読めば過去に恋した誰かを思い浮かべながら読むことになる。

「君の膵臓を食べたい」、この言葉にあなたは涙することになるだろう。この言葉の意味を考えてみよう。

死ぬまでにやりたいこと

パンダ
死ぬまでにやりたいこと……、うーん、なんだろうなぁ。

「んー、言いたいことは分かんなくもないけどさ。例えば、【秘密を知ってるクラスメイト】くんにも、死ぬまでにやりたいことはあるでしょう?」
「……なくてはない、かな」
「でも今、それをやってないじゃん。私も君も、もしかしたら明日死ぬかもしれないのにさ。そういう意味では私も君も変わんないよ、きっと。一日の価値は全部一緒なんだから。何をしたかの差なんかで私の今日の価値は変わらない。私は今日、楽しかったよ」

今それをやってないじゃん、これを余命がわかった状態の人が言うというところにこのセリフの重さがある。結局人間は、自分の余命がわかっていようがわかっていまいが、やりたいことをなんでもかんでも今やる、というふうには行動できないものなのだ。先延ばしにしていつしか忘れ、結局やらずに一生を終える、それが普通の生き方なのだろう。

だが、それでいいのだろうか。

それで死の間際に後悔することはないだろうか。

僕と山内桜良の会話はウィットに富んでいる

パンダ
全体的にセンスある会話だな。

この小説では、病気を抱えた山内桜良が明るく振る舞っているシーンが多い。だがそれはつよがりなのだろう。たまに弱音が出てくる。次の言葉はふと山内桜良が言ったセリフだ。

「私が、本当は死ぬのがめちゃくちゃ怖いって言ったら、どうする?」

ただあまりに山内桜良がふざけたことをしたシーンがあり、「僕」が怒った。そして「僕」は後悔することになる。次のセリフは「僕」の言葉だ。

知らなかった、誰かに怒りを向けることが、こんなに誰かを傷つけるなんて。こんなに自分を傷つけるなんて。

まだお互い高校生、それなのにについて考えさせられる状況なのだ。明るく振る舞うとか、怒りをぶつけてみるとか、そんなことをしながら成長する時期のはずなのに。

山内桜良にとって生きるとはどういうことか

パンダ
よ~く読め。

ここでは、「僕」から、君にとって生きるとはどういうことか、と問われたときの、山内桜良の言葉を引用する。

「誰かを認める、誰かを好きになる、誰かを嫌いになる、誰かと一緒にいて楽しい、誰かと一緒にいたら鬱陶しい、誰かと手を繋ぐ、誰かとハグをする、誰かとすれ違う、それが、生きる。自分たった一人じゃ、自分がいるって分からない。誰かを好きなのに誰かを嫌いな私、誰かと一緒にいて楽しいのに誰かと一緒にいて鬱陶しいと思う私、そういう人と私の関係が、他の人じゃない、私が生きてるってことだと思う。私の心があるのは、皆がいるから、私の体があるのは、皆が触ってくれるから。そうして形成された私は、今、生きてる。まだ、ここに生きてる。だから人が生きてることには意味があるんだよ。自分で選んで、君も私も、今ここで生きてるみたいに」

これだけ読んだら当たり前のこと、と思うかもしれないが、これを病気を抱えた余命1年未満の高校生が言っていると知って読むと、その印象は大きく変わる。余命がわかっていてもわかっていなくても、このセリフにあることは大事だ。だが、余命がわかっていない人ほど、このセリフを噛みしめる必要があると思う。

あなたのまわりにある幸せは当たり前ではない。いつかは必ずなくなるものだ。それを再認識した上で、生きていく必要があるのではないだろうか。

おわりに

最後に、山内桜良の印象的だったセリフを引用しておわりにしよう。

「最近妙に人の体温が好きなんだよねー」

どんなシーンでのセリフなのかは自分の目で確かめてほしい。彼女の強さと弱さを垣間見ることのできるシーンだ。

パンダ
やっぱり生きたかったんだよな……。う……、ううう……(号泣)
君の膵臓をたべたい (双葉文庫)

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