
今回の書評は『ゴミ人間 日本中から笑われた夢がある 西野亮廣』だ。
本書は、映画「えんとつ町のプペル」が完成するまでのエピソードや、西野氏の苦悩を描いた渾身のエッセイである。
私は本書を読んで、西野氏の痛みが手に取るように感じ取れて、涙してしまった。
日々がんばっている人には何か今後のヒントになる本であると思う。
がんばっても報われない、どうしたらいいかわからない、そんな人に是非読んでいただきたい。
日本中から叩かれた西野氏に向けた言葉のなかで、その発端となる言葉をまず紹介しておこう。
「なんで、西野はココにおらんの?」
「あの人はひな壇には出ないんです」
「芸人やったらひな壇に出ろよ」
『ゴミ人間 日本中から笑われた夢がある 西野亮廣』がオススメの理由

僕は『オルゴールワールド』のビラを1万枚刷って、都内を走り回っていました。「ポスティング」というやつです。
西野氏は若くしてテレビで売れっ子芸人になり、成功を収めた。
絵本作家になったあともそのイメージはなかなか変わらないだろう。
そのため一見派手そうに見えるが、その内情はドブ板もドブ板、まさに足を使った宣伝をしていたのだ。
これ以外にもツイッターで手当たり次第連絡をとり出資の依頼をしたことも書かれている。
このあたりで胸が痛んだ人もいるだろう。芸能人だし、うまくやっているんだろうなどと思うかもしれないが、まったくそれは的外れで、まさか元売れっ子芸人が夜中にチラシを撒いているなど誰が想像できるだろう。
そのギャップをいちばん感じているのは他ならぬ本人だろう。しかしそれでもあきらめず絵本を書き続けた精神力に敬服する。普通の人ならあきらめているだろう。なんでこんなことしなくちゃいけないんだ、と言いながら。
それでも西野氏は愚直に続けた。
成功と失敗のちがいは、ただ一点、続けることができるかどうか、それだけなのかもしれない。
日本中から叩かれていた西野氏

皆、もともと、夢の類を持っていたのだけれど、大人になる過程で、己の能力や環境を鑑みて、折り合いをつけて捨ててしまった。
そんな中、「皆が折り合いをつけて捨てたモノ(=ゴミ)」をいまだに持ち続け、丁寧に磨き、輝かせようとしている者がいる。
これは西野氏が、自分が叩かれる理由を分析したものだ。
自分が諦めて埋めたものを他の誰かが掘り起こしている、そんな光景をみたら誰もが、やめろと、言いたくなるのだろう。
なぜやめさせようとするかと言えば自分ができなかったことを他人にやられることが嫌だからだ。
失敗すればいいが成功した場合、自分よりも他人のほうが上であり、自分は負け犬となることを恐れてしまうのだ。
だから全力で邪魔をする。全力で失敗させようとする。
それは人間なら当たり前のことなのかもしれない。
でもそれはあまりにもみっともなくないか?
叩く人は直接ではない。顔の見えないSNSを通じて叩くのだ。
言わば自分の素性がバレることはない。
安全圏から石を投げる行為は、楽なのだ。
楽して自分の鬱憤を晴らすことができる、
ある種現代において甘美な愚行なのだ。
どんな意見や主張も、誰かを傷つけている可能性がある。
絶対に正しいことでも誰かにとっては正しくないこともある。
発信をすることは自由だが、それがどんな影響を及ぼすのかを考え、謙虚な姿勢でいることが求められているのだと思う。
会社やチームのリーダーに必要なもの

リーダーであるために心掛けていることは次の2つ。
全員の意見に耳を傾けて、最後は独裁する。
正解を選ぶのではなく、選んだ道を正解にする。
西野氏も書いているが、リーダーがやってはいけないのは多数決である。
多数決はチームを分断するのだ。
100人いたとして51対49になった場合、51人は賛成してくれているが、49人は反対なのだ。
要は半分が不満を持つことになる。これによりチームは分断する。
チームワークが大事などというリーダーに限って民主主義を気取って多数決をやりたがる。
その実、分断が進むだけで一向にチームは強くならないのだ。
リーダーは嫌われることを恐れてはいけない。
しっかりと正当性のある判断ができれば簡単に嫌われたりはしないのだが、身近な人の反応を大事にしすぎるあまり、エンドユーザーまで配慮が行き届かないとビジネスは成功しない。
アメリカの大統領選を見てもわかるだろう。
ほぼ僅差で勝敗が決まる。
当選したとしても、半分は支持者ではないのだ。
そこでいかに謙虚になれるか。
そしていかに責任を持って独裁になれるか。
それがこれからのリーダーに求められているものであろう。
最終的に独裁であっても、最終的に正解を導き出すことができれば、ようやくそこで評価される。
これからの時代の舵取りは非常に難しい。
しかし、正解にたどり着いたとき、周囲から絶大な信頼を得ることができるであろう。
終わりに
最後に、本書を読んだ人は映画「えんとつ町のプペル」を是非観てほしい。西野氏の苦労や痛みを感じられるはずで、きっと涙を流すだろう。
本書にも書かれているが、映画のなかの台詞をひとつ引用して締めるとしよう。
だったらまだわかんないじゃないか!
