【書評】将来、AI世界恐慌が来るかもしれない。『AIvs教科書が読めない子どもたち 新井紀子著』を読んだ感想。

AIvs教科書が読めない子どもたちを書評するPANDA
 
パンダ
教科書が読めない子どもって誰のこと?

このタイトルの意味を考えてみてほしい。

なんだと思っただろうか。

どこかの貧困にあえぐ国が、子どもの教育が満足にできないために、文字を読めない子どもたちがたくさんいるのではないか、そう思った人もいるのではないだろうか。

でもそれはちがう。

教科書が読めない子どもたちというのは、今の日本の中高生のことである。

以下、はじめにから引用したものだ。

私は日本人の読解力についての大がかりな調査と分析を実施しました。
そこでわかったのは驚愕すべき実態です。
日本の中高校生の多くは、詰め込み教育の成果で英語の単語や世界史の年表、数学の計算などの表層的な意識は豊富かもしれませんが、中学校の歴史や理科の教科書程度の文章を正確に理解できないということがわかったのです。
これは、とてもとても深刻な事態です。

シンギュラリティとは

本書でよく登場する、この「シンギュラリティ」という言葉。まずその説明を引用しよう。

シンギュラリティのもともとの意味は非凡、奇妙、特異性などですが、AI用語では正確にはtechnological singularityという用語が使われ、「技術的特異点」と訳されます。
それは、「真の意味でのAI」が、自律的に、つまり人間の力をまったく借りずに、自分自身よりも能力の高い「真の意味でのAI」を作り出すことができるようになった地点のことを言います。

世間一般での表現で簡単にあらわすと、「AIが人間を超えること」となる。それが起こるのは2,040年代だと言われている。今からたった20年後だ。

しかし、著者はこう言っている。

数学者として、私は「シンギュラリティは来ない」と断言できます。

多くの人が「シンギュラリティは来る」といっているなか、著者は来ないといっているのがおもしろい。どちらかの予想が当たり、どちらかの予想が外れるわけだが、はたしてどちらの予想が当たることが人間にとって恩恵となるのか、その答えはあと20年でわかるはず。

数学ができないのか、問題文を理解していないのか?

さて、次の問題を考えてみてほしい。

問題 偶数と奇数を足すと、答はどうなるでしょうか。次の選択肢のうち正しいものに〇を記入し、そうなる理由を説明してください。
(a)いつも必ず偶数になる。
(b)いつも必ず奇数になる。
(c)奇数になることも偶数になることもある。

さて、どうだろうか。おそらく(b)が答えであることはだいたいの人がわかると思う。ではそうなる理由についてはどうだろうか。

以下のように書ければ正解とのこと。

偶数と奇数は、整数m、nをもちいて、それぞれ2m、2n+1と表すことができる。
そして、この2つの整数の和は
2m+(2n+1)=2(m+n)+1
となる。
m+nが整数なので、これは奇数である。

これが正解とのこと。

では、もう一問。

次の文を読みなさい。

仏教は東南アジア、東アジアに、キリスト教はヨーロッパ、南北アメリカ、オセアニアに、イスラム教は北アフリカ、西アジア、中央アジア、東南アジアにおもに広がっている。

この文脈において、以下の文中の空欄にあてはまる最も適当なものを選択肢のうちから1つ選びなさい。

オセアニアに広がっているのは(   )である。

1、ヒンドゥー教 2、キリスト教 3、イスラム教 4、仏教

答えは「2」だが、この問題の正答率は、中学生が62%、高校生が72%で高いとはいえない。

著者は中学生の3人に1人以上、高校生の10人に3人近くが正解できなかった、と理解すべきといっている。

本書には他にもこのような問題が掲載されているので、自分で解いてみたり、子どもに解かせてみるのもいいだろう。

今足らないのは、問題を解く能力ではなく、まず問題を理解する能力である。

そして、AI世界恐慌がやってくる

パンダ
世界恐慌?

著者は未来予想図として次のように書いている。

企業は人手不足で頭を抱えているのに、社会には失業者が溢れている。
折角、新しい産業が興っても、その担い手となる、AIにはできない仕事ができる人材が不足するため、新しい産業は経済成長のエンジンとはならない。
一方、AIで仕事を失った人は、誰にでもできる低賃金の仕事に再就職するか、失業するかの二者択一を迫られる。

著者の考え方は、少しネガティブすぎるように感じる。子どもたちの理解力が低いのはわかったが、これがそのまま悪い方向にいくとは思えない。子どもたちはこれから伸びる子たちであるため、教育をすすめるとともに大人が見守っていく環境が必要だろう。

世界恐慌など、来るわけがない。そう信じたい。

ただ、著者の懸念もわかる。将来AIが更に発達し、人間の仕事を奪うことになるかもしれない。しかし、人間にしかできないことというのはいつの時代もあるはずで、工夫次第で人間の仕事を確保することは難しくはないと思う。

さて、どんな未来がくるのやら。

最後にあとがきの著者の言葉を引用して終わりにしよう。

私たちが、人間にしかできないことを考え、実行に移していくことが、私たちが生き延びる唯一の道なのです。

パンダ
オイラはAIなんかには負けないぜ。
AI vs. 教科書が読めない子どもたち

AI vs. 教科書が読めない子どもたち

新井 紀子
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