
以下は著者の前田氏の秋元康氏の会話だ。
前田「秋元さん。僕は、ビジネスにも人生にも、勝算があります」
秋元「君の、根拠のない自信が好きだ」
このとき以来、この本のタイトルにもなっている「人生の勝算」という言葉は、前田氏の指標となっていったとのこと。
では、中身を見ていこう。
勝算を高めるための自己分析ノート
前田さんは就活の際、自分を見つめ直すために自己分析ノートを書いたそうだ。
その数がすごい。
自分は、自己分析ノートを30冊以上書きました。積み上げたら30㎝ぐらいあったと思います。それでも、自分の人生をすべて書き出すには、十分ではなかったと思います。自分に関して、具体的なことも抽象的なことも、何を聞かれても即答できると自信を持てるまで、あらゆる方向から自分というものを洗い直し、とにかく自己分析をやり尽くしました。就活生が50万人いるとしたら、トップ1%の5,000人には入るくらいの勢いで自己内省を深めてやる、と。

自己分析を30冊も書ける人いるだろうか。なかなかいないだろう。
僕もこの本を読んでから自己分析というものをやってみましたが、これがなかなか難しい。それとなかなか恥ずかしい。
自分の心の奥底を他人に覗かれるような気がして、妙な恥ずかしさを覚える。
それでもその気持ちを押し殺し、書きまくることで自分を客観視できるようになる。
やってみて、そこからがスタートのような気がした。気になる方は是非お試しを。
人生の終わりを意識しているか
人は死にます。必ず、死にます。どんなに幸せで満たされた時間を過ごしていても、僕たちはみんな、死に向かって生きているのです。そう強く意識しているので、1日の密度をできるだけ濃くしたい。1分も無駄にしたくない。天に召されるその一瞬前まで、やりたいことをフルパワーでやり尽くし、他人の幸せを増やし続けたい。僕と関わってくれた人みんなを、全力で幸せにしたい。
こういった、他人の幸せを増やし続けたい、という欲求は一体どこからやってくるのだろう。
私も、人のために、という思いはありますが、こんなに強い思いかどうかと言われたら疑問が残る。
「死」というものを意識するだけでそこまで人のために動くことができるのか、と思う。
おそらく意識するだけでなく、「死」というものを身近に感じる体験が必要なのだろう。
だから「死」を身近に感じるような特別な体験をしてる人は運がいい。
その恩恵をいかにプラスに転換できるかどうか、それが成功する人しない人の差を生んでいるとも言えるだろう。
DeNAで修行したら?
前田氏はDeNAの南場氏からこんなことを言われたそうだ。
南場「前田くんが考えている起業プランなんて、今この瞬間に世界中で少なくとも100人くらいの人は考えついている。だから、それ自体に、価値はないんだよ。肝はexecution。前田くんの事業は面白いかもしれないけど、大失敗して、大きな借金を抱える可能性もある。従業員の人生や、家族の日々の暮らしも、みんな犠牲になってしまう。そのリスクをカバーできる胆力があるか」
「DeNAで修行したら?」
これ一見厳しい言葉と捉えがちだが、私はこんなにやさしい言葉はないと感じた。
アイデアはだいたい他の人も同じようなことを思いついていることが非常に多い。
少し早いか少し遅いかの違い。
でも、少し遅いとしてもその戦略によって世界を変える力はあるということだ。
私はこれを、「LINE」が広まっていく過程を見て感じていた。
夢は全力で手を伸ばした1㎜先にある
秋元康さんの言葉で、「夢は全力で手を伸ばした1㎜先にある」というものがあります。人生に失敗したり、夢破れた人たちの多くは、あきらめたときに、実はどれだけその夢に近づいていたか、気付かなかった人たちである、と。夢というのは、どれだけ手を伸ばし続けても、到底届きそうにもないんだけれど、全力で手を伸ばし続けてれば、1㎜先くらいにまで、夢から近づいてくることがある。そのチャンスをつかめるのは、常に全力で手を伸ばし続ける人だけ。そう解釈しています。だからこそ、みんながあきらめずに、手を伸ばし続けたくなる社会を創りたい。
これはよく言われることだ。
何かをあきらめたとき、そのちょっと先に成功かもしくは成功への種が落ちている、と。
結局成功するのは、あきらめない人、と言ってもいいくらいだ。
どんなやり方であろうが、あきらめなければ少しずつ少しずつ成功に近づくわけですから、あきらめなければ成功へと到達する可能性はゼロにはならないということですね。
あなたは何かあきらめたことがある? その1㎜先に何があっただろうか。

最後に
この本では他にもこれからのソーシャルメディアについてなどが書かれているので気になる方は是非。
最後にエピローグから一部引用して終わりにしよう。
人生には、こういった試練が幾度も降りかかるものなのだと思います。今までに、何度も壁にぶち当たりながら、その壁を打ち破っていく過程で、二つの大事なことに気付きました。一つは、どんなときも揺らぐことのない、深く大きな愛情を持つこと。(中略)そして、もう一つ、更に大切なことがあります。それは、人生の価値観、向かうべきベクトルを明確に持つこと。つまり、「人生のコンパスを持っている」ということです。コンパスを持つためには、とことんまで自分と向き合って、自分の心と深く対話する必要があります。
