【書評】第160回芥川賞受賞『1R1分34秒 町屋良平著』を読んだ感想。ボクシングを題材に青年の苦悩と葛藤を描く傑作。男性にオススメの本。

1R1分34秒を書評するPANDA
 
パンダ
1R1分34秒に何があるんだ?

今回の書評は第160回芥川賞を受賞した『1R1分34秒 町屋良平著』だ。

本書は、ボクシングを題材とし、青年の苦悩と葛藤を描いた作品である。あくまでボクシングを題材にはしているが、それは他の何かに置き換えてもいいだろう。

仕事や人生で悩みを抱える男性が、多くの共感を得ることができるだろう。女性が読めば、身近な男性の悩みを知ることができるかもしれない。

一風変わったタイトルの「1R1分34秒」の意味は、最後まで読めばわかるので、じっくり読み進めてみよう。

『1R1分34秒 町屋良平著』のあらすじ

パンダ
純文学系はだいたい一人称で「ぼく」だよな。

タイトルから察しはつくと思うが、本作はボクシングを題材とした小説である。

主な登場人物を紹介しておこう。

・ぼく
・近藤青志
・友だち
・ガールフレンド
・ウメキチ

「ぼく」はプロボクサーだがなかなか結果が出せず引退もチラついている状態。「近藤青志」は「ぼく」が次に戦う対戦相手。

「友だち」は「ぼく」の友達で、映画を撮って賞を取ることを目標としている。ガールフレンドとは微妙な関係で、その呼称は別のものが合っているかもしれない。

「ウメキチ」はプロボクサーだが、今回「ぼく」のトレーナーにつくことになり、「近藤青志」に勝つためにトレーニングを「ぼく」に仕込む役だ。

「ぼく」「友だち」など名前のない登場人物が多いのが本書の特徴だ。

小説における名前には特に大きな意味はないのかもしれない。

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2019.01.25

おまえは勝ちたいのか

パンダ
オマエ、本当に勝ちたいと思ってるか?

以下は「ぼく」と「ウメキチ」のやりとりの一部である。

「反則じゃないすか?」
「反則じゃない。勝ちたいか?」
「は?」
「どっち? おまえは勝ちたいのか? きれいなボクシングにしがみつきたいのか?」
沈黙した。永遠のような二ラウンド。風も止まり、ジム内の喧騒も止まり、息がくるしい。応えられない。信じられない。目のまえの人間を。信じたほうがいいのかも、わからない。目が回る。ぐるぐる。死にたい。

ウメキチから正攻法ではない戦い方を教えられ、それに対して「ぼく」はどうしたいのか苦悩する場面だ。

これはスポーツだけでなく仕事などでも遭遇する場面だ。正攻法でやれば失敗する可能性が高いが、反則ではないにしろ正々堂々とは言えない戦略というものを使うか否か、だ。

仕事であればこれは許される可能性が高い。むしろよく考えたと褒められるかもしれない。仕事において求められるのは結果、利益であるため、過程は置いておいて成功さえすれば評価されることが多い。

ただスポーツにおいてはそれが遺恨を残す場合が往々にしてある。それは周囲からの風当たりだけでなく、自分自身の心の問題だ。

自分の心で納得していなければ勝ったとしても、心の奥の残滓がいつまでも自分を責めたてることになる。

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2019.01.18

人間関係

パンダ
人間は人間関係気にしすぎじゃね?

人間関係。
くそくらえだ。ぼくはボクサーだから、ボクシングでぜんぶかたをつける。勝ちつづけたいなら、感謝が要る。気づかいがいる。心根からの、配慮がいる。だけどぼくは、次が闘えればもうそれでいい。だれも観ていなくても、ボクシング界がどうあろうとどうだっていい。いまはただただ技術と向き合いたい。

人間関係、これは働く上で切っても切り離せないものだ。人間関係への配慮ができないために出世ができなかった人も多くいるだろう。

某芸人が語っていたが、芸能界も結局は実力だけでなく世渡り上手であることが必要、ということを言っていた。その結果、今はひとりでキャンプの動画を撮っているのだがそれはそれでうまくいっているようだ。

仕事や何かがうまくいかないと思っている人は、まずは人間関係は置いておいて技術のみに集中するといい。

それでのけ者にされ孤独を感じたとしても、技術を磨くことで成長し、やがて新たな出会いも生まれる。そこまで突き抜けないとダメなのだ。突き抜けず途中で楽なほうへ逃げようとすると何もかもうまくいかない。

「嫌われる勇気」が幸せになるためには必要なのだ。

その勇気を持ち、自分を信じ続けた結果、その相手にカウンターパンチを食らわせることができるだろう。

『1R1分34秒 町屋良平著』、おわりに

最後に、本書で気になった部分を引用して締めるとしよう。

「こええ、こわいよ。こわいんだ……」

パンダ
ボクシングを自分の仕事に置き換えてみな。きっと何か見えてくるぜ。
第160回芥川賞受賞 1R1分34秒

第160回芥川賞受賞 1R1分34秒

町屋 良平
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